2011年07月16日
映画『ソウル・キッチン』


この作品は、「ドイツ・フランス・イタリア製作」です。
登場人物たちも実に多国籍な作品です。
一般的に「ドイツ映画」と聞くと
「重そうで、暗そうで、シリアス」なイメージがあります。
実際、そういった作品も多い。
けれど、時として思いっきり弾けた映画も届きます。
この作品もそうです。
最高に愛すべき作品です。
ギリシャ移民ジノスはちょっとドジだけど
気のいいレストランオーナー兼シェフ。
経営する「ソウル・キッチン」は料理にソウル(魂)はこもっていないが、
安さでそこそこ営業している。
そこに、保護観察で出所した兄や
不動産屋を営むかつての同級生が現れる。
そして、頑固だが腕のいいシェフが入って、
「ソウル・キッチン」は大繁盛!
めでたし、めでたし・・・・で終わるわけナイ。
大変なのはここから。
とにかく、面白い!!
キャラクターそれぞれがとってもいい。
クセは強いがそれがいい味となっている。
(一番クセがナイのが主人公ジノスかも)
思わず身体が動いてしまうようなノリのいい曲と
テンポのいい展開で、
あっという間の99分です。
最後のエンドロールもカッコイイ仕上がりです。
最近何となくさえない気分の方、
暑さにうんざりしている方、
是非、足を運んで下さい。
適度に冷えた映画館でクールダウンして
気持ちよく笑って下さい。
スッキリ、リフレッシュできること間違いなしデス!
シネマ・イーラにて上映中 7月29日(金)まで
浜松市中区田町シネマ・イーラ http://cinemae-ra.jp/index.htm
2011年07月16日
映画『ナンネル・モーツァルト〜哀しみの旅路〜』


天才作曲家、ウォルフガング・アマデウス・モーツァルトの名前は
よく知られている。
映画、小説等彼のことを描いたものは多い。
けれど、彼に4歳年上の姉がいたことはあまり知られてはいない。
この作品は、その姉「マリア・アンナ・モーツァルト」通称“ナンネル”を描いている。
音楽が大好きで、作曲の勉強をしたいと思っているナンネルだが、
当時は女性が音楽をする環境になかった。
「頭の中に新しい音が生まれてくる」と父親に作曲の勉強を頼むが
「女には難しい」の一言で拒まれてしまう。
弟モーツァルトが5歳の時に作った曲は
実はナンネルがほとんど作ったものだと知っても、
父親は彼女の願いを聞こうとはしない。
その後ベルサイユで知り合う王太子への恋、
あきらめきれない音楽への情熱。
15歳少女が一人で負うにはあまりに大きすぎた。
王太子が彼女の作曲した曲を気に入り、
室内楽団に演奏させた時の
ナンネルのはにかみつつも誇らしげな表情。
あのまま彼女の熱意が通じれば・・・・と願って観ていました。
でも、そう簡単にいくはずもない。
才能がありながらそれを発揮する場さえ与えられない。
身分や性別で職業も差別されてしまう。
これは18世紀の物語だが、
すぐ近い時代まで似たようなことは起こっていた。
映画『カミーユ・クローデル』を思い出した。
彼女も時代に押しつぶされた一人だった。
美しい音楽とロココの豪華な装飾を背景に
流れるように描かれた作品です。
ナンネルの生涯をあなたにも知ってもらいたい。
シネマ・イーラにて上映中 7月29日(金)まで
浜松市中区田町シネマ・イーラ
2011年06月30日
映画『冷たい熱帯魚』

う〜、すごい。
凄すぎる映画です……。
園子温監督は、今回も観客を唖然とさせました。
前作『愛のむきだし』で映画館泣かせの4時間という長さにも関わらず
最後まで観客を引きつけ続けた力技は、今回も遺憾なく発揮されました。
いや、「遺憾なく」どころかはるかにそれ以上でしょう。

90年代に起こった埼玉・愛犬家殺人事件など
実際に起こった猟奇的な事件にインスパイアされて作られた作品です。
しかし、たんに事件をなぞっただけではありません。
人間に潜む「悪」や「暴力」といった
外見からでは分からない“ナニカ”に
園監督はこだわり、それを暴こうとします。
一見お人好しにみえながら、
実は底知れぬ恐ろしさを秘めた「モンスター」である村田。
些細なことから彼との関わりを持ってしまう主人公・社本。
カメラは何気なさを装いながら、
決してそれだけではない“ナニカ”を
観客に感じさせながら物語は進行します。
監督のカメラは、人の神経を逆ナゼします。
いや〜な感じ、不快感すれすれの際をこするように映し出していきます。
園監督の作品はジョットコースター作品かもしれません。
一端席に着いたら観客は降りられません。
あとは監督のなすがまま。
怒濤のような高低差で振り回されます。
快も不快も愛も憎しみも赤裸々に炙り出されます。
キャスティングがうまいですね。
「モンスター」村田にいい人役が多い、でんでん。
一方的に引きずり込まれる気弱な社本に
エキセントリックな役が多い吹越満。
でも、それだけでは終わらない役柄に
彼らのうまさが光ります。
この作品はもう観てもらうしかありません。
どれだけ言葉を尽くしても、
この作品の凄さを伝えるのはムズカシイのです。
でも、スプラッターが苦手な方はご注意下さい。
実は私、何度か正視できずに目をつぶりました。
見終わった後も、すぐには席を立てませんでした。
ここまで肉体的ダメージを受ける映画も珍しいです。
やっぱり、凄すぎる作品です。
シネマ・イーラにて上映中 7月8日(金)まで
浜松市中区田町シネマ・イーラ http://cinemae-ra.jp/
2011年06月30日
映画『ブンミおじさんの森』

なんて幻想的な映画でしょう。
死者や異形の者にも生者と同じように接する。
懐かしさや愛しさはあっても、恐れはない。
すべては自然の一部。

森の奥深く暮らすブンミおじさん。
自分の行く末を思い、義妹に森を残そうと考えている。
ブンミおじさんは、おおらかな人柄で
国境を越えてきた移民達にも分け隔て無く接している。
そんなおじさんの元に、ある夜訪問者が・・・
タイの豊かな自然あふれる森を舞台に
人と精霊の関わりが描かれています。
この一風変わった作品は、2010年度の
カンヌ国際映画祭でパルムドール(最高賞)を受賞しています。
このアジアの風土が色濃く反映している作品がパルムドールというのは
少々驚きでもありますが、
その時の審査委員長がティム・バートンだったことを考えると
わかるような気もします。
若い頃、
ヨーロッパの優雅な文化にあこがれました。
アメリカの広大さや豊かさにあこがれたこともありました。
けれど、年を重ねてきて
アジアに生まれたことがとてもうれしく感じるようになりました。
自然との一体感、
形のあるもの、ないものへの感じ方、
すべてのものに生命を感じる感性。
そんなアジア的なものが、自分の中にしっかり息づいていることを
感じるようになったからです。
私もいつか自然と一体になり、溶け込んでゆくのでしょうか。
ここだけがすべてではない。
あちらでも私は私なのでしょうか。
シネマ・イーラにて上映中 7月1日(金)まで
浜松市中区田町シネマ・イーラ http://cinemae-ra.jp/
2011年06月11日
映画『愛する人』


原題は『Mother&Child』
まさに、母と子、親子の物語です。
とは言っても、単純にそれだけではありません。
男と女の感じ方の違いも描かれていて、
様々な複線が張られて物語の味わいを深くしています。
14歳で出産した子供をすぐに手放したカレン。
そのことでカレンは母親に対し
無意識のうちに怒りを抱いていた。
病身の母親の面倒をみながら、介護士としても働くが、満たされてはいない生活。
彼女にとっては、14歳から時間が止まっているかのよう。
一方、生後すぐに里親に預けられたエリザベスは
優秀な弁護士となるも、おいたちのせいか人になじめず、
刹那的なつきあいを続けている。
(ここの描き方は、少々通俗的だと感じもするが・・・)
そんなエリザベスが、望まぬ妊娠をした。
彼女の中に、彼女自身でさえ驚くような変化が・・・・。
血のつながりとは、
親子とは、そんな問いかけが画面から聞こえてくるようです。
カレン役のアネット・ベニングがとてもいいです。
若い頃は「いかにもハリウッド」的な美人さんでしたが、
いい感じに年を重ね、目尻のシワも好ましく、
悩み、揺れるカレンの心情をごく自然にうまく演じています。
またカレンとエリザベスの親子だけでなく
養子を迎えようと希望する一組のカップルを交えたことで
さらに映画に深みがでたように思います。
赤ちゃんを養子として迎えたけれど、その世話にうんざりする若い母親に
彼女の母親が一括する場面は見事です。
まさに、母は強い!
監督・脚本は『彼女を見ればわかること』と女性描いた作品を撮った
ロドリゴ・ガルシア
(この人、作家ガルシア・マルケスの息子さんです)
制作総指揮は『21グラム』のアレハンドロ・ゴンザレス
(『21グラム』もとてもイイ作品です。未鑑賞の方はお奨めします)
スタッフ、キャストともに力が入った上質な作品です。
女性の方々は、是非!
シネマ・イーラにて上映中 6月24日(金)まで
浜松市中区田町シネマ・イーラ http://cinemae-ra.jp/
2011年05月28日
映画『台北の朝、僕は恋をする』

とってもカワイイ恋物語です。
思わず微笑んでしまうような。
片思いの純情な青年としっかり者でキュートな女の子、
そこに恋人に振られたばかりのマッチョな刑事と
小悪党数人を混ぜて、
グルグルとかき混ぜたような物語。
途中で『アメリカン・グラフィティ』を思い出しました。
町を離れる前夜の一晩の騒動。
でも、この作品では結果が違いますが。
作中、二人が夜の町を歩くシーンで
多分「夜市」と思われる場所が出てくるのですが、
エネルギーに満ちて、更にとっても美味しそう。
台湾を旅行することがあったら行ってみたい場所です。
シネマ・イーラにて上映中 6月10日(金)まで
浜松市中区田町 シネマ・イーラ http://cinemae-ra.jp/
2011年05月28日
映画『180° SOUTH』

期待通りのいい作品でした。
大自然をとらえた映像が素晴らしいです。
殊にグッとくる男性は多いでしょうね。
1968年、二人の青年が中古のバンに
サーフボードと登山道具と記録用の16ミリカメラを積んで
南米パタゴニアへ向かった。
若さ故の大胆、形のない可能性、未だ見ぬ未来への漠然としたあこがれ。
そんな諸々のものを抱いて彼らは旅を進めた。
そして長い旅を終えたとき、彼らの意識は大きく変化していた。
一人は「patagonia」を創業したイヴォン・シュイナード、
もう一人は「THE NORTH FACE」を創業したダグ・トンプキンス。
そして40年後、二人の撮った記録映像を見て感激した青年が
かれらの旅路を追体験する旅に出た・・・。
自分の力で行動することの素晴らしさと大切さが伝わってきます。
その場に行き、実体験してはじめてわかることがあるのです。
自然を描いただけならテレビのネイチャースペシャルと変わりません。
ここには、自然の懐に入り、それらをそのまま受け入れようとする
若い感性が満ちています。
「若い感性」は年齢で計ることはできません。
70歳近いダグとイヴォンの肉体と精神の若さと強さはどうでしょう。
彼らの精神には一本のしっかりした芯があることが感じられます。
その芯を作ったのは、若いときの旅でした。
体験して彼らは変わったのです。
かつて詩人・寺山修司の評論集に「書を捨てよ 町へ出よう」というのがありました。
今風に言うならば「バーチャルに浸るな 町へ出よう」でしょうか。
自分の足でしっかり大地を踏みしめて、歩き出したい。
70歳になったころ「自分の人生に後悔はないよ」言い切るためにも。
シネマ・イーラにて上映中 6月10日(金)まで
浜松市中区田町 シネマ・イーラ http://cinemae-ra.jp/
2011年05月21日
映画『ヤコブへの手紙』


なんていい作品なんでしょう。
静かで暖かな余韻がいつまでも残ります…。
恩赦で釈放され、盲目の老牧師ヤコブのもとで
彼に届いた手紙を読み、返事を書くことになったレイラ。
かたくなな態度のレイラと常に神とともにある老牧師ヤコブ。
鳥の声と葉ずれの音しかしない白樺の林。
質素な牧師の生活。
牧師に相談し、祈りを願う数々の手紙。
心を閉ざしていたレイラにも変化が…。
登場人物はたったの3人。
レイラ、牧師、そして手紙を配達してくる郵便配達の男性。
更に背景は牧師館と教会だけ。
なのに、こんなに味わい深い作品が作れるなんて。
レイラや牧師の背景は全く語られないままに物語は進む、
しかし、最後に全てがわかったとき
この映画の意味が観る側にもわかる。
レイラと牧師の静かな関わりのなかに
様々な感情、考えが生まれてくる。
まるで牧師が天使となり
レイラを導くかのようなラストに涙が止まらなかった。
今年の(私の)ベストテンに入れたい作品です。
シネマ・イーラにて上映中 5月27日(金)まで
浜松市中区田町 シネマ・イーラ http://cinemae-ra.jp/index.htm
2011年05月20日
『100,000年後の安全』上映します!

『100,000年後の安全』上映が決定しました。
8月13日(土)より、シネマ・イーラにて上映致します。
浜岡原発が一旦停止しました。
しかし、中電も国も再稼働を考えています。
本当に原子力は必要なのか。
安全に管理することができるのか。
是非、多くの皆さんにご覧頂きたいと思います。
そして、考えましょう。

『ミツバチの羽音と地球の回転』
こちらも9月3日(土)〜16日(金)
同じくシネマ・イーラにて上映致します。
瀬戸内海の祝島とスウェーデンでエネルギーの自立に取り組む人々を描いています。
これからのエネルギーを考えるために
是非ご覧下さい。
浜松市中区田町笠井屋ビル3F シネマ・イーラ http://cinemae-ra.jp/index.htm
2011年05月19日
「食」を観る映画祭 第二弾
しばらく中断していたこのブログですが、
今回より新たな気持ちで再開いたします。
またおつきあい下さい。
こんな時だからこそ、暖かな映画を観たいですね。
でも今回ご紹介するのは、残念ながらコワイ作品です。


『フード・インク』
一昨年に上映された『いのちのたべかた』に共通する
目に見えない「食」の現場を描いています。
私たちは、ナンとなく思っていますよね。
野菜は畑で太陽をサンサンと浴びてすくすくと育っていく。
牛は牧場でのんびり草を食んでいる…、そんな牧歌的なイメージがあります。
しかし、それは幻想です。
現在、世界の食の現場は数社の大企業が占めています。
消費者は彼らに管理・指定された方法で処理された食物を食べているのです。
そこは牧歌的なイメージとは対照的「食の工場」です。
暗闇で育てられるニワトリ。
その鳥は短期間で消費者に好まれる胸肉が大きくなるように育てられ、
自分の体重の重さで歩くことさえできない奇形とも言える形になっている。
牛や豚は糞尿にまみれたケージに押し込められて処理場に送られる。
焼き肉のユッケによる食中毒事件が記憶に新しいが、
この作品をみれば、生食用の肉が流通していないのは当然だと感じます。
食べているもので、その人はつくられる。
自分は何を食べているのか、改めて食の問題を考えさせられました。
映画の最後に語っています。
・労働者や動物に優しい、環境を大事にする企業から買う
・旬のものを買う
・有機食品を買う
・ラベルを読んで成分を知る
・農家の直販で買う
・(小さくても)家庭菜園をもとう 等
できることから、始めよう。

『ありあまるごちそう』
冒頭の山に積み上げられたパンが毎日捨てられる光景に唖然とします。
畑では暖炉に使うとうもろこしを育てる農家がいる。
そして、片方には衛生的な水さえ手に入らず、飢えている人々がいる。
ブラジルは世界最大の大豆輸出国なのに、
自国には教育も職も水も食品も手にできない貧しい人々が大勢いる。
「食」の不均衡は衝撃です。
この作品はヨーロッパで作られたので、
EUという巨大な国が「食」を管理しようとする様子が批判的に描かれています。
日本の食料自給率は40%(2009年)です。
世界中から7割近くの食料を輸入しながら、
一人当たりの食料廃棄量は世界一です。
日本が廃棄している食料は、途上国約5000万人分の食料に匹敵します。
この数字をしっかり見つめるべきでしょう。
2作品に共通するのは「食」の問題ですが、
それを考えてゆけば自ずと自分の生活を考えることになります。
エネルギー問題も含め、もう一度自分の生活を振り返る必要があるのではないか、
そんな思いを抱きました。
是非、多くの皆様にご覧頂きたい作品です。
シネマ・イーラにて 5月27日(金)まで上映中
浜松市中区田町シネマ・イーラ http://cinemae-ra.jp/index.htm
今回より新たな気持ちで再開いたします。
またおつきあい下さい。
こんな時だからこそ、暖かな映画を観たいですね。
でも今回ご紹介するのは、残念ながらコワイ作品です。


『フード・インク』
一昨年に上映された『いのちのたべかた』に共通する
目に見えない「食」の現場を描いています。
私たちは、ナンとなく思っていますよね。
野菜は畑で太陽をサンサンと浴びてすくすくと育っていく。
牛は牧場でのんびり草を食んでいる…、そんな牧歌的なイメージがあります。
しかし、それは幻想です。
現在、世界の食の現場は数社の大企業が占めています。
消費者は彼らに管理・指定された方法で処理された食物を食べているのです。
そこは牧歌的なイメージとは対照的「食の工場」です。
暗闇で育てられるニワトリ。
その鳥は短期間で消費者に好まれる胸肉が大きくなるように育てられ、
自分の体重の重さで歩くことさえできない奇形とも言える形になっている。
牛や豚は糞尿にまみれたケージに押し込められて処理場に送られる。
焼き肉のユッケによる食中毒事件が記憶に新しいが、
この作品をみれば、生食用の肉が流通していないのは当然だと感じます。
食べているもので、その人はつくられる。
自分は何を食べているのか、改めて食の問題を考えさせられました。
映画の最後に語っています。
・労働者や動物に優しい、環境を大事にする企業から買う
・旬のものを買う
・有機食品を買う
・ラベルを読んで成分を知る
・農家の直販で買う
・(小さくても)家庭菜園をもとう 等
できることから、始めよう。

『ありあまるごちそう』
冒頭の山に積み上げられたパンが毎日捨てられる光景に唖然とします。
畑では暖炉に使うとうもろこしを育てる農家がいる。
そして、片方には衛生的な水さえ手に入らず、飢えている人々がいる。
ブラジルは世界最大の大豆輸出国なのに、
自国には教育も職も水も食品も手にできない貧しい人々が大勢いる。
「食」の不均衡は衝撃です。
この作品はヨーロッパで作られたので、
EUという巨大な国が「食」を管理しようとする様子が批判的に描かれています。
日本の食料自給率は40%(2009年)です。
世界中から7割近くの食料を輸入しながら、
一人当たりの食料廃棄量は世界一です。
日本が廃棄している食料は、途上国約5000万人分の食料に匹敵します。
この数字をしっかり見つめるべきでしょう。
2作品に共通するのは「食」の問題ですが、
それを考えてゆけば自ずと自分の生活を考えることになります。
エネルギー問題も含め、もう一度自分の生活を振り返る必要があるのではないか、
そんな思いを抱きました。
是非、多くの皆様にご覧頂きたい作品です。
シネマ・イーラにて 5月27日(金)まで上映中
浜松市中区田町シネマ・イーラ http://cinemae-ra.jp/index.htm
2011年02月19日
映画『約束の葡萄畑 〜あるワイン醸造家の物語〜』

ワイン、お好きですか?
ワインそれだけでも、食事とあわせても、
ふくよかな香りとともに味わうひとときは至福のときです。
これはそんな至高のワイン作りを目ざした男の物語。
ワイン作りは目標であり、彼の人生でもある。
土壌、天候、収穫を見極める目、発酵の具合、
ワインは自然的要素に左右されることも多い。
そのなかでおいしいワインを作り出すことはまさに奇跡のようだ。
そして、奇跡を起こすためには天使の力も必要なのだ。
この作品のおもしろさは、単にワイン作りの努力物語だけでなく、
女性との恋愛や天使との道ならぬ恋などの
ファンタジックな展開もある点だ。
たまらなくワインが飲みたくなります。
ワインを持ち込んで、
この作品をアテに飲めば、
天使の味がするかも、ですよ。
シネマ・イーラにて上映中 3月4日(金)まで
浜松市中区田町シネマ・イーラ http://cinemae-ra.jp/
2011年02月19日
映画『海炭市叙景』


実は、観る前は少々躊躇する気持ちがあった。
「暗そうだなぁ・・・」と。
確かに、明るい作品ではない。
しかし、心の中に確実にしみわたってくる何かがあった。
造船所のリストラで職を失った兄妹。
立ち退きを拒み猫と暮らす老婆。
若社長となりつつも経営難に苛立つ男。
妻の裏切りに傷つくプラネタリウムに勤務する男。
地元に帰りつつも折り合いの悪い父親を避ける男。
5つの話がオムニバスにつながってゆく。
函館でロケした画面が活きている。
鉛色の空、冷えた空気の中舞い散る雪。
いつの間にか、私も「そこ」にいた。
画面の中に入り込んでしまった。
彼らの傍らでやりとりを聞いているかのように。
ほほに海炭市の冷たい空気を感じるかのように。
場面転換でハッと現実にかえることさえあった。
それほどの集中力がこの作品にはある。
演ずる役者たちの生々しい息づかい、感情が
観る側にも体感できる。
作品が持つ力強さは、函館で製作されたことも大きいと思う。
フィルム・コミッションの協力だけでなく、
エキストラで出演された方々、周りで物心両面で撮影を支えた方々、
彼らの協力なくしては、この力強さはなかっただろう。
原作者の佐藤泰志は函館の出身である。
作中でお墓参りする場面が出てくるが、
これは原作者佐藤のお墓に参っているのだそうだ。
函館を愛する多くの人に支えられて完成した作品と言える。
プロデューサーの越川道夫氏は浜松出身である。
ほんとうに良い作品をつくられたと思う。
越川さん、ありがとうございました。
近年、邦画の製作本数は増えているが心に残る作品は少ない。
この作品は、その数少ない心に残る一本です。
シネマ・イーラにて上映中 3月4日(金)まで
浜松市中区田町シネマ・イーラ http://cinemae-ra.jp/
2011年02月12日
映画『ゲゲゲの女房』

『私は猫ストーカー』に続いて2作目の
磐田市出身、鈴木卓爾監督の作品です。
30年代の懐かしい風景の中、
貧乏な生活でありながら、漫画に没頭する主人公と
それを支える妻の物語です。
すでにテレビで放送されて人気となった原作を元にしています。
テレビ版と違って2時間と短い時間になっていますが、
ふたりのつましく、ほのぼのとしながらたくましい夫婦関係が
気持ちよく描かれています。
部分的にアニメーションを使用しているのも効果的です。
ユーモラスな場面もあり、
水木しげるの世界をうまく感じさせています。
前作でも感じた鈴木卓爾監督の
人柄が感じられるようなあったかさがあります。
脚本家の宮藤官九郎のひょうひょうとした演技に感心。
彼の起用を決めた方は凄いと思います。
光の使い方、効果音の使い方など、
細かな部分こだわりが感じられ、
それらが効果を上げていることが感じられます。
こころがホッとする一作です。
シネマ・イーラにて上映中 3月4日(金)まで
浜松市中区田町シネマ・イーラ http://cinemae-ra.jp/
2011年02月07日
予告!「食を観る映画祭」第2弾開催します。


2年前に行いました「食を観る映画祭」の第2弾が決定いたしました。
5月14日(土)より2週間にわたり、下記の2作品を上映致します。
『フード・インク』http://www.cinemacafe.net/official/foodinc/
『ありあまるごちそう』http://www.cinemacafe.net/official/gochisou/
前回に続き、身近な食についてのドキュメンタリー作品です。
今回はシネマ・イーラでの通常上映となりますので、
会員証等の割引も使用できます。
多くの皆様方にご覧頂きたい作品です。
時間等はもう少し近づきましたらシネマ・イーラのホームページにて発表致します。
今しばらくお待ち下さい。
2011年02月06日
映画『彼女が消えた浜辺』

最近めざましい中東の映画です。
仲良しの家族3組と独身男女2人で休暇を過ごすため旅行に出かけた。
手違いから浜辺の少々古い別荘に滞在することになる。
3組の家族は独身2人を結びつけようとする。
そのことに少々困惑するエリ。
波の高い海で遊んでいた子供がおぼれたことに端を発し、
事件が起こる。
突然消えたエリ。なぜ?どこに?
嘘が嘘を呼び、残された3家族の間にもきしみが入っていく・・・・
サスペンス仕立ての展開が面白い。
知っていると思っていた知らない人。
彼女は誰?
良かれと思って言ったことが新たな問題を起こす。
ある意味、誰にも、どこでも起こりそうな展開に
少々恐ろしさも感じつつ観た。
監督の手腕の見事さを感じた。
多少ダイビングをやった経験のある者から言わせてもらうと、
あんなに波の荒れた海に、子供一人で入らせるなんて、ムボーです!
シネマイーラにて上映中 2月18日(金)まで
浜松市中区田町シネマ・イーラ http://cinemae-ra.jp/index.htm
2011年02月06日
映画『シングルマン』

ファッションに詳しくない私でも、
カリスマ・ファションデザイナー、トム・フォードの名前は知っている。
グッチを再生し、トップブランドとして蘇らせたのは、
トム・フォードの手腕であると言われている。
そのカリスマ・デザイナーの初監督作品である。
今までも、様々な分野から映画界にやってきた「迷監督」は多かった。
「トム・フォード、お手並み拝見」といった気持ちで観た。
観終わった後、ドキドキした。
自分が興奮しているのが分かった。
ひとつひとつのシーンが美しい。
画面の隅々まで、トム・フォードの美意識が貫いている。
けれど、独りよがりになることもなく、
フォードは、長年のパートナーを失った主人公に寄り添い、
丁寧に彼の心情を描写していく。
原作はあるが、まるで自分も同じような経験をしたかのように
主人公のショック、喪失感、虚無感、やるせなさを描いている。
あれだけの大成功を収めた人間にこんな虚無感や喪失感が描けるとは。
あらゆる物を手に入れながら、
長年のつきあいのある信頼するパートナーがいながら、
フォードは満たされていなかったのだろうか。
いや、どんな人間であっても、すべてを手にしれることはできない。
「生きる」ことの苦さを感じる。
それだから、一瞬が美しい。
真面目で堅物の役柄が多かったコリン・ファースのひと味違う演技も良かった。
隙のない身なりで演じる彼の姿は哀しい。
ファッションに興味がなくてもあっても、
是非ご覧下さい。
お薦めしたい作品です。
シネマ・イーラにて上映中 2月18日(金)まで
浜松市中区田町シネマ・イーラ http://cinemae-ra.jp/index.htm
2011年02月03日
映画『パリ20区、僕たちのクラス』


さすがにカンヌでパルムドールを受賞した作品です。
観客はいつのまにか、
彼らと同じ公立中学校のクラスに同席しているかのようです。
緊張感ある彼らのやりとりにハラハラし、
彼らの笑顔にほっとしたり。
ドキュメンタリーのような仕上がりです。
パリ20区は様々な人種がすむ地区のようです。
教室には世界のアチコチの出身である子ども達が学んでいる。
しかし、教室に入って着席するまで15分もかかり、
授業中も私語をやめない。
先生の言葉尻をとらえて揚げ足取りをする生徒。
キレそうになる先生。
多分、実際に教職についている方が観れば「わかるわぁ」と
思わず口にしてしまうような場面が続く。
この緊張感ある作品を生んだのは、
先生役で出演しているフランソワ・ベドゴーである。
彼は元教師であり、その経験をもとにして原作を手がけているからだ。
国語の教師である彼は、生徒に言葉の大切さを教えたい。
自分の気持ちを伝えるにも、
コミュニケーションをとるにも、言葉が大切だから。
でも、彼の気持ちはなかなか生徒には伝わらない。
そのいら立ち、やるせなさが共感できる。
フランスと日本の違いも興味深い。
生徒の評価を決める会議に生徒代表が同席するなんて!
日本では考えられないことです。
そんな違いも面白く、画面に引き込まれます。
生徒役の素人の子ども達の演技が素晴らしい!
シネマ・イーラにて上映中 2月11日(金)まで
浜松市中区田町シネマ・イーラ http://cinemae-ra.jp/index.htm
2011年02月02日
映画『玄牝』
観れば、生きる勇気がわいてくる『玄牝』。どんな人もそれぞれの立場で深い思いを巡らせる素敵な体験になる作品です。
「玄牝」とは老子の言葉で、「神秘なる母性」の意味。
河瀬直美監督が自ら16mmフィルムカメラで撮影したドキュメンタリー作品で、愛知県岡崎市の産婦人科吉村医院が舞台。
50年にわたって自然出産に取り組んできた吉村医院には、古民家「古屋」が併設されていて、
妊婦さんたちはそこで昔ながらのそうじや薪割りなどをして、自然な出産への身体作りをする。
吉村正院長は「不安はお産の大敵。妊娠したらよく歩き、運動し、自然の力に身を委ねること。ゴロゴロ、パクパク、ビクビクしないこと。」と語る。
登場する妊婦さんたちは生き生きとしていて、出産シーンは本当に感動的。
河瀬監督の作家性が随所に出ていて、吉村先生礼賛視点ではなく、先生の苦悩にまで深く切り込んでいたり、助産婦さんたちの立場や本音にも迫っていたり、困難を乗り越えてく妊婦さんの姿などは特に印象的。
2月28日の監督挨拶には、映画に登場した妊婦さんたちが子供連れで駆けつけてくれて、とても賑やかでなごやかな上映会となった。
「玄牝」とは老子の言葉で、「神秘なる母性」の意味。
河瀬直美監督が自ら16mmフィルムカメラで撮影したドキュメンタリー作品で、愛知県岡崎市の産婦人科吉村医院が舞台。
50年にわたって自然出産に取り組んできた吉村医院には、古民家「古屋」が併設されていて、
妊婦さんたちはそこで昔ながらのそうじや薪割りなどをして、自然な出産への身体作りをする。
吉村正院長は「不安はお産の大敵。妊娠したらよく歩き、運動し、自然の力に身を委ねること。ゴロゴロ、パクパク、ビクビクしないこと。」と語る。
登場する妊婦さんたちは生き生きとしていて、出産シーンは本当に感動的。
河瀬監督の作家性が随所に出ていて、吉村先生礼賛視点ではなく、先生の苦悩にまで深く切り込んでいたり、助産婦さんたちの立場や本音にも迫っていたり、困難を乗り越えてく妊婦さんの姿などは特に印象的。
2月28日の監督挨拶には、映画に登場した妊婦さんたちが子供連れで駆けつけてくれて、とても賑やかでなごやかな上映会となった。
2011年01月24日
映画『冬の小鳥』


いきなり親から引き離され、
寒さに凍え、冷たい雨に打たれる
一羽の小さな小鳥。
主人公ジニはその小鳥そのものだった。
父親によってカトリック系の養護施設に預けられたジニ。
きっと父親が迎えに来てくれると
周囲に馴染もうとせず、頑なにひとり過ごすジニ。
徐々に今の状態を受け入れてゆくが・・・。
大好きだった父親と離れた不安。
大好きだった父親に捨てられた絶望。
そんな孤独と絶望の日々は、小さな女の子が抱えるにはあまりに大きい。
ともすれば、声高に叫ぶお涙頂戴の感動作になりそうな所を
監督は静かにジニの心情に寄り添い、彼女の心の成長を描いてゆく。
だから観る側も、落ち着いてジニの姿を追うことができる。
過剰な演出を避けたのは、監督の実体験が描かれているからだろう。
ジニは多くの孤児の姿であり、監督の姿でもあったのだ。
血縁にこだわり、戸籍上の問題等もあって
孤児が韓国内で養子先を見つけることは難しかった。
そのため、数多くの子どもたちが海を渡って行ったという。
(これは現在も続いているそうだ。)
ひとり海を渡った小さな小鳥が、
いつの日か自分の翼を大きく広げて
大空に羽ばたくことを祈ってやまない。
シネマ・イーラにて上映中 2月4日(金)まで
浜松市中区田町シネマ・イーラ http://cinemae-ra.jp/index.htm
2011年01月17日
映画『ペルシャ猫を誰も知らない』

『酔っぱらった馬の時間』
『亀も空を飛ぶ』
バフマン・ゴバディ監督作品は、いつも心の深いところに突き刺さる。
イランでは、ポップミュージックは禁止されている。
CDを出すにも、コンサートを行うにも当局の許可がいる。
けれど、様々な制約下でも人々は音楽をあきらめない。
地下で、牛舎で、したたかに彼らは好きな音楽を続ける。
何でもありの日本では考えられない状況下で
ミュージシャンたちは自分の音を奏でる。
外国へ行ってコンサートを行いたいと願う一組の男女。
しかし、パスポートもビザもない。
それらを音楽関係の何でも屋ナデルに依頼し、
更にバンドメンバーを集めようと動きます。
テヘランの街のアチコチで、こっそりと音楽が奏でられている。
ラップ、ヘビメタロック、ブルース・・・etc。
テヘランの様々な音楽シーンを織り込みながら物語は続く。
厳しい規制の中で、それでもしたたかに音楽を続ける姿がとてもいい。
しかし・・・・・。
テヘランの実在のミュージシャンが演奏する音楽を背景に
テヘランの市井の人々の生活が描かれている。
遠くてミステリアスな国、イラン。
抽象的なイメージはあるが、我々は彼らの姿を知らない。
監督の今までの作品とひと味違うのは、
当局に新作の撮影を許可されない監督が
業を煮やしゲリラ的に無許可で撮影したからだ。
「テヘランの生活のありのままの熱とリズム、ダイナミズムを捉えようとした。」
主演の二人は撮影終了の4時間後には出国していたという。
田舎の公園で演奏する「Darkoob」が印象に残った。
音楽もいいが、併せて踊る姿が美しかった。
彼らの演奏をもっと聞きたいと思ってくる。
映画館を出ると、外は一面の雪景色だった。
浜松には珍しい大粒の雪をフロントガラスに受けながら、
映画の余韻を噛みしめながら帰った。
印象的な位一夜だった。
シネマ・イーラにて上映中 1月28日(金)まで
浜松市田町シネマ・イーラ http://cinemae-ra.jp/index.htm
